勤労大衆を抑圧し、半封建的、半殖民地的搾取をつづけつつある一握りの少数者によって「搾取のためにつくられた強制のための特別の機構」こそ、絶対主義的、軍事的、警察的天皇制[#「天皇制」に×傍点]の帝国主義日本国家である。かくの如き日本ブルジョア国家が憲法を持ち、議会を持つというのも結果においては、勤労大衆に向っての卑劣な欺瞞として役立つに過ぎない。それは、天皇制[#「天皇制」に×傍点]支配が日本[#「日本」に×傍点]の資本家、地主独裁の野蛮な形態であるという現実を覆い、伝統的な神秘化によって、さも天皇[#「天皇」に×傍点]は本来、一種不可侵の道徳的優越性、絶対的尊厳を賦与されて綿々とつづくところの「神人」による支配であるかの如き迷信を、被搾取大衆に与える。憲法の保証する「集会の自由、言論の自由」「結社の自由」「出版の自由」がどんなものであるかということは、勤労大衆の眼を持ったすべての人は知っている筈である。集会で一言、半句も云わさない解散、検束、拘留は常例だ。家族的な集会にすら、警察の犬は襲撃している。
 このような天皇制[#「天皇制」に×傍点]支配の本質の胡麻化しによって、支配階級の絶対
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