矢張り、貴女の御作に接せずには得られない、一種の人格的精神感銘であると存じます。芸術の真価はそこにあるのではございますまいか。
 そういう意味に於て、私は「霊魂の赤ん坊」を忘れることが出来ません。
 あの御作の裡には、貴女でなければ持得ない芸術的表現と、価値の人格化が行われていると存じます。心を動かさずには置きません。思い出さずにはいられません。その忘れられず、思い出さずにいられない理由は、決して単に、あの中に含まれている「問題」によるものではございません。その問題を抱擁し、こなし、芸術的表現を与えた作者の、芸術家として純一な、全人的な燃焼と昂揚とに感動させられるのでございます。最も貴女らしい文字を透して、私共は、貴女に成り切った貴女[#「貴女」に傍点]の御心を読ませられます。その時、貴女というものは、他の追従を許さない絶対の貴女であって、同時に、日常の貴女の或るものからは、完全に解脱した人格のしん[#「しん」に傍点]の光耀に接するのでございます。
 あらゆるよき[#「よき」に傍点]芸術の驚くべき独立性と、普遍性との調和が、そこから生ずるのではございますまいか。
 こういう芸術品ほか持
前へ 次へ
全6ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング