げられるように感ずる maternal tenderness を認めずにはおれませんでしょう。
作品に漂う独特な優雅や敏感、または、人類の理想的生活に対する憧憬、現実に対する批判、永遠に達せんとする叡智等も、皆、ここに還るべき故国を持っているのではございますまいか。maternal tenderness という概念は普遍的であると存じます。然し、それが或る人格の裡に、如何なる量で摂取せられたかということに成ると、非常に個性的な、各自の気質《テムペラメント》の問題に成るのではございますまいか。
そうだとすると、最も独特な個性的気質によって創造されて始めて価値のある或る人の芸術が、気質の著しい一底流を反映せずには在りようのないのは当然でございましょう。
若し、私の感受性を信頼すれば、私は、「新しき命」に納められた数篇の中に、明《あきらか》にその独自な気質の映像を認められると存じます。
「二人の小さいヴァガボンド」は、内容に、種々な価値の問題、教育、宗教に対する考察、或は子供と大人の世界の差異に対する精密な観察等が含まれているにも拘らず、芸術品として、読者の心に喚起した創造的な共鳴は、
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