争中の日本人民は、あのように侵略思想で統一され、偽瞞されつくした。金を儲ける文化企業者は、人民の生血そのものをも、平気で自分の利益に換えた。軍閥・資本家の結托というと、政治綱領めいて響くが、現実はまざまざとその真実であることを示しているのである。
日本の民主化ということは、実に実に重大な意味をもっている。日本の民主化は、全くじかに、私たちの人間性の主張と自覚と、人間として生きるよろこびの確保ということに結びついているのである。
地方文化と都会文化との分裂、地方が文化上の搾取に会うことは、民主精神が伸長して、地方における人民自治の実質が高まったとき、根底から変化させられる。
社会政治の全面に、わたしたちの健全な判断力が反映してゆくにつれて、文化に対しても私たちは、自主の権威にみちた選択の自由をもち、創造の自由を得るのである。
本当の民主の生活とそのこころが身につけば、地方が所謂地方主義に陥ることもなくなって来る。自分の地方だけの独特性、その価値、その主張を固執する心理の原因は、一方に単調な、画一な中央主義がある場合である。このいずれも亦、十分の民主化のない社会文化におこる危険で
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