木の芽だち
――地方文化発展の意義――
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)漸々《ようよう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四六年五・六月〕
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この頃は、日本じゅうのあちらこちらの都会を中心として、文化的な動きが著しくなって来ている。
これ迄、その町から一冊の雑誌も出ていなかったようなところからも、かなり念の入った出版物が発行されるようになった。東京そのほかの大都会は破壊された。地方の小都市は、その犠牲からまぬがれた。そこには様々の理由から紙がある。印刷所がある。民主日本の新らしい潮はそれらの条件にさし加って、若い世代を中心とした文化の動きが見られるようになって来たというのが、一応の事情である。
けれども、この文化の中心の全国的な散開という新しい事実には、それだけの現象にとどまらず、明日の日本にとって、私たちの明日のよろこばしい生活にとって、深甚な意味をもっていると考えられる。
アメリカは勿論のこと、イギリスでもフランスでも、文化の中心は決してただ一ヵ所の首都に集注されてはいない。ボ
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