力、合理性との間に、調和し難い裂け目が口をあいている。それであるからこそ、アカデミーについて言及する時、人々の顔には複雑な表情が浮ばざるを得ないのである。
松本学氏によって「文芸懇話会」がつくられていた間、文芸懇話会賞というものが出されていた。この間この組織が実質に於てより大規模な上述の諸組織に発展的解消をするに当って、最後の賞を尾崎一雄氏、川端康成氏に与えた。この賞に当っても、嘗て会員によって推薦された作品が、所謂左翼的立場に立つ作家によって書かれているものであるという理由で、投票破棄になった事実は周知のことである。
もし真に文学の発展を期するのであれば、日本の文学史の上に一つの新たな芸術運動をもたらした左翼的作家の業績も、当然アカデミーによって評価せられなければならない筈である。それは決して為されない。そういう要求を明言することさえ野暮であるというのが一般の通念である。山本有三氏の芸術を愛する者の心情は或は菊池寛氏の腰を据えた常識を愛する者の気分より現代の日本に貢献するところが多いかもしれないにかかわらず、山本氏は「一部の異論」で芸術院会員になれなかった。それらの現実にむき出さ
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