だ。午後四時まで第一大学附属内科の婦人部で働いた。夜はラブ・ファクへ通ってダルトンプランの教育を受けた。一間に一間半もある大ペチカのある病院の台所の隅で ターニャは代数の方程式を書くのだ。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――お湯ぬるくありませんか
――丁度いい
[#ここで字下げ終わり]
 一寸黙って居たがターニャは愉しそうに伸びをして、両腕を頭の後に組み乍ら云った
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――もうじき私、休みを貰う
――いつ?
――明日お医者のところへ行って診て貰ってね、今週のうちに貰えるでしょう
――私の方がのこっちゃったわね
――ニチェヴォー、直きよくなりますよ、
[#ここで字下げ終わり]
 分娩までに二ヵ月、分娩後二ヵ月の休暇を〔約三字分空白〕留の援助金とともに貰うのだ。
 ターニャは石鹸の泡だらけのスポンジで私の背中をこすりつつ、又云った。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――何て往来が暖かくなったんだろう! これからは私散歩、散歩!
[#ここで字下げ終わり]
 彼女のよろこびが溢れて 私を包んだ。
[#ここから改行天付き、折
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