無題(七)
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)玉菜《カプースタ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三十五|留《ルーブル》貰い

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]
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 時砲の玉みたいな製鉄炭酸瓦斯管が立って居る。水色エナメルの変圧器の上に日光がさした。その日光は窓枠の上に雑然と置かれたシクラメンの葉ばかりの鉢や、酸づけ玉菜《カプースタ》の瓶をも照して居る。エミール・ヤニングスが世界的映画「※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]リエテ」の中で、食卓から立ってしめたと同じプロレタリアの水道栓が壁にあった。わきに幾枚も古びた外套が重ねてかけてある。外套の下に上靴《ガローシ》と防寒靴《ワーレンキ》が三足かためてあった。窓から二米はなれて湯槽があった。黒い髪だけが湯槽の外へ見えた
 この間こんな絵を見た。やっぱり今ここに在る通り湯槽から頭だけが見えて居る。これは禿げた爺のロチョー部だったが
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