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――いいわね ターニャ、よく散歩して赧い赧い顔をした赤ちゃんを早くお生みよ
――私子供がそりゃすきなんです
[#ここで字下げ終わり]
 それはターニャが、腹の重さで心地足を引ずるようにし乍ら、歩いて居る様子でよくわかった。
 二十歳の、親なしの雑使婦のターニャの白い上被を着た身のまわりには腹の児に対する愛とともに深い生活の安心が輝やいて居た。
 天気の晴れたり曇ったりにまで、草のように気分を影響される病人で満ちた空間をよこぎって、ターニャの重い腹と金髪が動くと、そこには美さえあった。СССРの新社会制度が 此世にもたらしたよき人間的美の一つとして、自分はそれを感じるのであった。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――赤ちゃんが生れてもラブ・ファクつづけるの
――もう一つ部屋を貰えればつづけられるんです 知り合の女の子に来て貰ってね
[#ここで字下げ終わり]
 ターニャは、
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――男の子が生れるといい
[#ここで字下げ終わり]
と云った。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――ソヴェトロシアでは 男も
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