くしいのもあたり前じゃありませんか」
女「ほんとうにネ。これからいつまでも私の家に居てちょうだい。私はいつでも美くしいうたをうたってあなたを可愛がりましょうネ」
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小さい手を力一ぱい握って瞳をかがやかしながらそう云うんでした。旅人は嬉しそうに又困ったらしく、
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小「エエ居てもいいですけど私はまだ行く所があるんですもの」
女「もう行きたい所ってここより外にないでしょう。ここが貴方の来たいと思って居らっしゃった所なんですもの。これから毎日そこいら中におつれしましょう。ネ、いいでしょう。どうぞ居て下さい。私は一人で淋しくてしようがないんですもの。私、いくつだとお思いになって、まだ十八なの。けれど私一人でこんな所に居るの。私は不思議な人なんですのよ」
[#ここで字下げ終わり]
とその旅人の頭に頬をのせながらいいました。
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小「エッ一人? マア可愛そうに、お一人でいらっしゃるのこんな淋しい所に。マアそして不思議な人って。話して下さいネ。私はいつまでもここに居ましょうネ」
女「有難う、
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