て森の上が赤くなる頃、私は銀笛を持ちローズは歌の本をもって小さい川を渡って森ん中に行き、紫の山を見て木の幹によっかかりながらローズは美くしい声でうたをうたい私はそれに合せて笛を吹きます。そうするともう気も遠くなるほどいい気持になって二人で手を組み合ったままだまってしまいます。そうするとキット私の頭の中に一つ詩がうかびます。それを紙に書いて月の出る頃又川を渡って家にかえってその詩を母に見せて窓から頭を出してとなりのまどのローズに『サヨーナラ』といって白い床に入ってねるんです。ローズは私の姉さんのようにして呉れます。母も許して呉れるので」
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と赤い唇をうごかしながら軽くうたでもうたって居るような声音で女の体に身をよせながらその様子をしのぶような目をして話します。女は、
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女「そのローズさんはどんな風をして居ますの」
小「ローズですか。そりゃあ美くしい人です。私によく似て居て目がみどりで大きく毛はほんとうの黄金でいつでも何にもしないでさげて、白い着物を着て羊の皮の靴をはいて居て声の美くしい人なんです。私の姉さんなんですもの美
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