ます。マーブルのような女の美くしい頬にてりそってチラチラして居ます。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
女「寒かったでしょう、早くあったかくなってそして人の世の話をきかせてちょうだい」
[#ここで字下げ終わり]
女はぬれたみどりのマントをぬがせて自分のわきの椅子に腰をかけさせて、
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
女「小さくて美くしい方、貴方は何と云う御名」
子「私? 名はないんです、ただとなりの娘もお母さんも私の事を□□□[#「□□□」に「(三字分空白)」の注記]って云うんです、だから私も自分の名はそう云うんだと思って居ます」
女「マア可愛いい名、年は?」
小「十五」
女「妹さんがお有んなさるの? 毎日何をしていらっしゃるの」
小「私、妹も兄もないんです。私は毎日朝飯をたべると隣の娘と奥の牧場に行って今年生れた小羊を相手にリンゴの木かげで遊ぶんです。となりの娘はローズって名の通りの美くしい娘であの白い細いうでで私の首をかかえてじっと私のかおを見ながらいつも美くしい話をして呉れます。お昼になると家にかえっていろいろな話をするんです。それから日が少し西に落ちかけ
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