んですけれ共何だか行かなくては悪いような、いつも自分を可愛がって呉れるとなりの十八の娘に会った時のようになつかしい、何かに引かれるような気持でだまったままそのあとにつきました。指のそろって長い女は赤いかわのギリシャの女神のはいて居るような靴をはいて白い衣の裾をヒラヒラと切ってかるくかるく行きました。詩人はそのあとを小走りについて、その時、若しそこに人が居たならそれを何と見たでしょう。キット、古い人のかいた名画の中の人がこの美くしい雪の色に誘われて来たんだと思ったでしょう。旅人は夢のような気持で何か暖いものに抱かれたような気持で歩きました。いつの間にか目の前に美くしい小さい家が出ました。白い煉瓦で形よくつまれて、まわりにはつたがからまって居ます。みんな紅葉したのが一っぱい白い花が咲いてまどには紫のガラス。「ここが私の家ですの、入って頂戴」詩人は女に手をとられて中に入りました。すぐ美くしいかおりは身のまわりをこめて来ます。雪の光は紫のカーテンやガラスにさえぎられて部屋一面に薄紫、椅子もテーブルも皆趣きのある形をして居ます。美くしい形にきられたストーブには富と幸福を祝うように盛に火がもえて居
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