で行くんでスネ。一変[#「変」に「(ママ)」の注記]は死ぬものです、人間は、ネエ、そうでしょう、どうせ一度しななくてはならないんですもん」
[#ここで字下げ終わり]
 淡く紅さした頬は白い歯を出して淋しい笑をうかべました。その様子の美くしかった事。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
ロ「私の可愛い人何故今日に限ってそんな事を云うの。何か貴方につらい事でも出来たの。どうぞ、貴方の一人しきゃあない私におしえて頂だい。まだ若い貴方がどうしてそんな事を考えたの。お忘れなさい。そして華な将来をお考えなさい。世界に有名な詩人、その人のそばに始終かげの様について居た私のその時の嬉しさ、ネ、考えて御らんなさい。私悲しくなって来る」
[#ここで字下げ終わり]
 教える様にさとす様に云いましたけど、ローズだってまだ娘なんですもん、美くしい小い詩人の頭の中に考えられて居る事がどうして世間知らずの生娘に分るもんですか。自分までたよりない様な悲しい気持になって目からは熱いものがにじみ出ました。考えるともなしに今までの事を思い出して居ました。フト森の女、白鹿に育てられた女、と云う事がスーと目の前を走り
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