すぎた車の提灯の光の様に思い出されました。
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ロ「アアあの森の女、キット常の世のものとはちがうにきまって居る、それにあの別れる時に何と云っただろう、『あなたはとうとう私の心を知らずにかえっておしまいになるのネ。いつか貴方が思い出す時がありましょう。私はどうしてもあなたの心に入らなくてならない』オオ、マア、何と云う気味悪い言葉だろう、キット、キット、あの森の女の蛇の様な心がこの美くしい詩人の心をいためて居たにちがいないんだ。おお恐ろしい、オオ気味の悪い」
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 身ぶるいをしながらソット詩人をのぞきこむと安心したらしい安なかおをして暖い胸によってかすかないびきを立てて居ました。
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ロ「マア、いつのまにか、キット夜ねられないで居るのだろう、可愛そうに、私は胸が折れてしまうほどつかれてもこの美くしい人の眼はあけさせますマイ」
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 ふるえた小さい声で云ってしなやかな体をきつくだきしめました。話す相手もなく人形のような人を胸に抱いて居るローズは森の女の一度だき〆めた
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