内に詩人の部屋からは燈の光がもれてそしてペンの紙をする音が寝しずまった空気をふるわして居ました。朝母がもう起きたのと云う声をかけた時にはもう机の上には墨の模様のついた紙が沢山散って居ました。
それから一週間ほど食事の時毎にかおを合せるきりローズにも誰にもかおを見せないで一生懸命に書いて居ました。たった七日の間でした。時間にしたって百六十八時間の間でしたけれどもローズにはどんなにつらいそして長い時だったでしょう。旅に出て居た時にはいくら思っても帰ってくるまではと思っていましたけれどとなりどうししかも声をかけたらきこえる所に居ながら一日も合わずに七日もすごす、ずいぶんつらかったんですけれども、
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ロ「私の大切な人は今大変立派な物を書いて居るのだ。あの人の名誉は私の名誉、又この土地の名誉、我まんしましょう」
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強い勇ましい心をもって我まんしていました。八日目の夕方久振、ほんとうに久ぶりにローズの部屋に可愛い形をした詩人の姿が現れました。戸口を入るといきなり、
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詩「ローズローズ
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