う」
[#ここで字下げ終わり]
美くしい小さな詩人は冷たい風に吹かれる様な様子で部屋を出ました、そして急いでお昼をすましてすまない様な恐ろしい様な心地を抱いて又裏の花園からローズをたずねました。ローズはうしろむきに何かして居ました。けれども嬉しそうにその美くしい裾をヒラヒラさして出て抱える様にして部屋に入れました。一時間二時間若い詩人と美くしい三つ年上の女とは夢の様に淡いそして強い香を持った霧に立ち込められた様な柔いそして又つかれた気分で四時間位は夢の様にすぎてしまいました。左様ならをして家にかえったあとにローズが小さいやわらかくふるえた声で詩人の美くしい髪をなでながら、
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
ロ「貴方が十五で私が十八、三つ上」
[#ここで字下げ終わり]
と云ったのと深い心がありそうな目つきで見つめて居たローズの目の様子はどうしても忘られませんでした。その夜は詩人は外にも出ず書きもせず黒ずくめの着物を着た母のわきで祖母を対手にかるい調子で世間話をするのをききながら時々はりのある声で笑ったり時々母の話にあやをつけたりして床に入ってしまいました。翌朝まだ日の出ない
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