波うった毛を梳いて居ました。詩人は白いブカブカの寝着をきたまんまトントンと母の居間の戸をたたきました。母はうれしそうに笑みながら椅子から身を起して、云いました。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
「お早う、よくねられましたか、着物をきかえて御飯をたべたら、ローズの所へ行って行らっしゃい。朝早く来て、よんでましたよ」
詩「そう、お母さま、どの着物着たらいいでしょう。私の体は少しは育ったでしょう。御飯はここでたべましょう」
母「着物、そうネ、それじゃア、今出しましょう、顔を洗ってネ」
[#ここで字下げ終わり]
嬉しそうにして出て行きました。詩人はほほ笑みながら、今日は何をして何をしてと上の方を見ながら思って居ました。母は水色のかるそうなそして白いかおに似合う着物をもって来ました。詩人はそれを着て御飯を飯[#「飯」に「(ママ)」の注記]べて、庭づたいにローズの居る窓の下に行きました。ローズの部屋の窓は低くて花園は前にあり、窓の中にはローズが一番窓に近いイスによって一心に何かよんで居ました。詩人は、ソーと窓から頭を出して見るとローズは一寸も気がつかない様子、ソーと身をうかせて手
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