くしい貴いこれまで母の見た事のない美くしい程立派な詩が生れて来ます。母の目はよろこびと驚とにかがやきました。紙は十枚を出ました。
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母「もう休んでもよいでしょう、あしたになさい」
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手しょくの火は焔のまわりだけ丸くかがやいています。母はもうゆるいナイトコートを着て房々した毛もとかれて居ます。詩人はおとなしくたち上って紙をかさねてその上にインクスタンドを置いて、
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詩「お母さん、どうもおまち遠さま。我まま云ってすみませんでした」
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美くしい詩を作る人は親にもやさしゅうございました。
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母「いいえようござんすとも。立派な物さえ出来るなら私なんかいつまでおきていても」
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かるく答えて先に立ちました。若い子の夢は円《つぶら》でした。朝まで白いベッドの中で、頬を赤くして唇をかるく開いたままで、朝起た時はもう日がスッかり出て居ました。隣のローズは薄色の着物を着てまどのそばに出て黄金色の大きな
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