さんは自分の孫の此の上なく美くしい寝がおを見守っています。詩人が目をさましました時夕飯の頃にもうなって居て自分はいつの間にか雪の様に白いベッドの中にうつされて枕元には着かえるべきサッパリした着物も出て居ました。詩人は大きく目を開いて天井の一隅を見つめました。何故か大きい力のある目はうるんで居ます。美くしい詩人は彼の森の女が泣きたおれて正体もない様子を夢見たんでした。それは只夢でしたけれ共、若い心をもった詩人の心からは涙が出るんでした。けれども起きなおってその着物を着て髪をかきつけて出て行きました。夕飯はたのしくすみました。詩人は母が好物だというのでわざわざとってくれたローズの目の様な美くしいブドーを吸いながら、雪の日に旅立って門を出た時の事から今日門をくぐる時までの所を丁寧に話しました。母親も祖母も不思議な物語の様な話に耳をそば立てました。朗な声の調子は丁度奇麗な物語をよんでいる様に様々の事を話して行きます。やがて話はおわってお婆さんは息を深くしていいました。
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婆「貴方は幸なお子じゃ、きっと偉い詩人におなりじゃろう」
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