]と云う事を知っておいで」年若い人の頬にはほんのりと血がさしていつもより一しお美くしい声で云いました。
詩「私は知りません、けれ共ローズもそう云っていましたし又外の人の云うのもきいたことがあります『人の心の一番美くしく慾も誉も仇も争もなくなった時は恋した時の心だ』と云ったのを、私も物語で知っています、ほんとうに美くしそうなものです。けれども私は只心で思っている丈ですもの」と云いました。ほんとうに美くしい事をはなすにはふさわしく、美くしい声音で。
女「エエ、エエ、ほんとうに美くしい事ですワ、世の中にこれほど美くしいものは有りませんでしょう。ここにネ若し、或る一人の女が居るんです。その女がね、自分より年下のそれはそれは此の上もない美くしい人をもうたまらないほどに思っていたんですの。けれ共その人はあんまり若すぎました。それだもんでいくらどうしても女の心はわかりませんでした。それで女は死んでしまうほど悶えていたと云う話があるんですの。貴方はどうお思いになるの」少し頭をかかげて熱心に云いました。詩人は一寸困ったと云うような顔をしましたけれ共想像力の強い頭にはすぐうかんだ事がありました。
詩「可愛
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