くなった私の母のかおを見つめて居た。母は又、
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「そんなこわいかおをして。ほんとにこまってしまう妙な子で」又妙な子と云った。
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私は又娘にでも人の母にでも妻としての女にでもそれぞれこうであってほしいと云う心を持って居る。
娘は、いかにも娘らしい古風な島田にでも結うような娘ならば人から何か云われると耳たぶまで赤くしてたたみの目をかぞえながらこもったような声で返事をする。髪でも結ってくれるので満足して一通りの遊芸は心得て居て手の奇麗な目の細くて切れのいい唇もわりに厚くて小さく、手箱の中にあねさまの入って居るようなごく初心《うぶ》い娘がすき。
当世風の娘ならば丈の高い、少しふとり肉《じし》の手のふっくりとして小さい、眼のまつ毛が長くて丸く大きく、唇もあんまり厚くなく、あごのくくれたような輪かくのはっきりしたかおがすき。物をいわれてもはぎれのいい少し高調子の丸みのある声で答え、たたみのけばなんかむしらない人、いろいろな向[#「向」に「(ママ)」の注記]面に趣味をもって音楽も少しは出来文学の話相手も出来る人、髪でもなんでもさっぱりしていやみのな
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