間であるから若しや神様の思って居らっしゃる天職とはかけはなれた事を天職だと云ってやしないか。
母の答はこうであった。
[#ここから1字下げ]
「女の天職と云えば立派な世の中に遺す事業のような事の出来るような子を産むのが女の天職である。なぜかと云うと神様の作った世界がほろびずに行くと云うのは女が子を産む事があるからで神様は自分の作った世界のほろびる事を望んで居られる筈はない。神の心を満足させるような神の望んで居られる仕事をするのがとりもなおさず天職である」
[#ここで字下げ終わり]
そんならかたわでも馬鹿でもどしどし子さえうんでおけばそれでよいのか。若し世の中に事業をのこす事の出来る頭をもたない子を産んだらばその母は罪をおかしたものだと云われることが出来るかも知れない。
一番おしまいに私に答えてくれた母の言葉は、
[#ここから1字下げ]
「そんな事は世の中の人がいくら考えたってわからない事なんですもん。そんな事ばっかり考えて居れば気でもちがって華厳行になるよ。ほんとうに妙な子だ」と云うのであった。
[#ここで字下げ終わり]
私は椽がわからつきおとされたような気持でだまってしわの多
前へ
次へ
全7ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング