と、いきなり私の母は私の体をゆすったり大きな声を出したりして私の思った事をめちゃめちゃにこわしておいて、別にあやまりもしないで私のかおを大穴のあくほど見て一人ごとのように「妙な子だよ」と云う。そんな時には私はきっしりと抱いて居たものを頭の上から手が出てうばって行ったようなぽかんとした気持になってしまう。
私は人から妙な子と云われるのを格別苦労にも思わなければ又かなしいとも思わない。もしかすると妙な子と云われるのがほんとうなのかもしれない。まだ世の中のことを知ったようでまだ知りきれない半じゅく玉子のようなブヨブヨした私の心にはいろいろな不思議な事があり又不安心な事が大沢山ある。それがたぶん私の妙な子と云われるわけなんであろう。
私の一番不思議で又知りたいのは、
人間はなぜ生きて居なければいけないのか、死にたい時に勝手に死んでもよさそうなものだに。
と云う事である。その答として母の云ったことは、
[#ここから1字下げ]
「天職を全うするため」だと。
[#ここで字下げ終わり]
又私はその天職ってものがどんな事が天職であり又神様の思っていらっしゃる天職であろう。天職と云って居るのは人
前へ
次へ
全7ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング