なって辞職した現内閣閣僚の一人であったひとが、自分のうちの子供のためにコンクリート建十坪の天文台をこしらえているというような実例さえあります。私たち婦人の家事を、全く封建時代のありさまに押しもどすような電力不足の原因も、しらべてみれば、こういういくつかの事実があるわけです。
 私たちの日々は、きわめて畸型なやりくりの上でどうやらきょうまで廻転してきました。労働賃銀は戦前の二十七倍だのに、物価は六十五倍から七十五倍となっています。そして、政府は、日本の人民所得額は戦前の百倍と査定しているのに税率は百二十六倍になっています。このひらきを、私たちはどうやりくって来たのでしょう。ここに人間業と思われないような辛苦があるわけです。
 生めよ、ふやせよと叫ばれた婦人が、きょうは、産児制限をすすめられていることについても、婦人はいいしれない屈辱を感じます。売笑婦、浮浪児が増大するばかりで、六・三制の予算は削られ、校舎が足りないのに、野天で勉強する子供らのよこで、ダンス・ホールと料理屋はどんどん建ってゆきます。
 すべてこれらの日々の不合理をいきどおり、不満を抱き、解決の道を求めている人民の心の焦点を
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