、もっとつよい恐怖や不安に向けて、政府への注目をそらさせようとして、この次の戦争の危険を挑発しているやりかたは、実に卑劣だと思います。明治のはじめから日本の資本主義は軍事的な侵略をともなって来ています。暮しが辛くなると、戦争でなにかうまいことがありそうに思って来た癖を、また利用されていいものでしょうか。日本の婦人こそ、この第二次世界戦争で一番ひどい犠牲をはらっています。婦人こそ、最も切実に生活の安定と平和のために働く必然があります。
日本の婦人たちは、団体的に力を集めて婦人、子供、ひいては全人民の幸福のためにたたかう習慣を、ちっとももって来ていません。そのために、今日、家庭一つ一つにきりはなされた条件では、電力問題一つ解決できないのに、まだやっぱり、婦人の力を、大きい日本の独立と安定のために結集する能力をあらわしていません。一人一人、一つの団体はその団体としてだけ、なんとかこの苦しさを打開する方策をたてようとして来たと見られます。
しかし、もうその時期はすぎました。過去二年あまりの経験は、私たち日本のすべての婦人を、少しは賢こくして来ました。実際的にめざめさせたと信じます。個人個人
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