でやっと炊事をして、さてようようほっとしようとしたときは、停電だったり、たった二十燭のあかりだったりして、つぎものをするのも不便だし、本をよむのも不便です。電力不足は、税とも関係があるのだそうです。勤労所得税は五千円以上になると、賃銀から天引きされる率があんまりひどいから、鉱山に働く人々は、五千円以内に自分の賃銀をとどめて置こうとしているのだそうです。炭坑の封建的な重労働では、賃銀を五千円以上にとるだけ石炭を採掘することは、相当のがんばりがいります。食物もよけい入用です。だのに、骨を折って石炭を掘り出しても、賃銀をうんと天引きされてしまうのでは、つまり天引き分だけただ働きをすることになって、現実に命がもてません。だから石炭不足がおこり、電力不足もおこるのであって、日本の鉱山労働者がいくじなしなのではありません。
 石炭なしで電力をおこす水力発電所の工事は、日本中、何ヵ所か着手されたまま完成していません。セメントがまわらないためだそうです。国内で使用するセメントの割合は、全生産額のごく少部分です。しかもその少部分のセメントが、どんな風につかわれているかといえば、一番ひどい例は、先頃問題と
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