を証明した婦人作家たちは、たちまち軍情報局に動員されて、侵略軍のおもむいている、すべての地域に挙国一致精神のデモンストレーターとして利用されなければならないはめに立ったのであった。
婦人作家たちの上にもたらされたこの無慙なさかおとし[#「さかおとし」に傍点]の事情は、ひきつづき一九四一年十二月太平洋戦争にひき入れられたのちの五年間を通じる波瀾と社会変動を通じて、少くない数の婦人作家を生活的に文学的に消耗させてしまうこととなった。
一九三九年代に、婦人作家の活動が目立ったということにはいくつかの重りあった理由があった。第一は用心ぶかくプロレタリア文学運動の荒い波をよけて、いわゆる「純文学」にたてこもってきた婦人作家の大部分が、この時期に、それぞれ一定の文学的完成をしめすようになったということである。第二の理由として考えられるのは、当時の国民精神総動員の圧力によって作者の人間的・社会的良心をぬきにした題材主義の長篇がはびこっていたのに対して辛うじて婦人作家の文学が文学のかおりを保っていると思われたことである。生産文学、農民文学、戦線を背景としてかかれた小説のどれもが、主題は軍の統制配給
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