横切る」そのほかソヴェト同盟の社会主義社会の生活と文学のありようを精力的に紹介して、「冬を越す蕾」などの評論をかくようになって行ったというのは何故だったろうか。
 日本プロレタリア作家同盟がその組織のうちに婦人委員会をもったということは、現代文学史にとって重大な意味をふくんでいる。プロレタリア文学運動は、資本主義社会で生産の場面でも、文化の面でも常に抑圧と搾取をうけているものとしての婦人大衆の現実をはっきりつかみ、そこから婦人が解放されてゆくことを、全人民解放の課題の半ばをしめる実際の問題として理解したのであった。半植民的な労働賃銀で生存を保ってゆかなければならない日本の労働大衆のたたかいにとって、常によりやすい労働力・産業予備軍として婦人労働大衆が存在していることは、重大な問題である。八時間労働制、同一職業に男女同額の賃銀を、という労働運動の要求は、文化の面で、女も男と同じ程度の教育をうけたいという熱望につながった。職場と家庭とで二重に追いつかわれなければならない女の立場を改善してゆかなければ、女は人間以下の生きかたをつづけるだけである。この実感は、菊池寛の、封建的な女性観に色どられ
前へ 次へ
全60ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング