婦人たちがますます本を買って読みながら、自分たちの生きている歴史の意義や女の生活のおくれを自覚してゆく活溌能動の心情を失う方向へばかり導かれているとしたら、購買力として婦人の数の増大することはとりもなおさず、文学なら文学作品の商品化に拍車をかける作用をするばかりのようなことになる。今日、ともかく婦人の間に読書の風がひろまりつつあるとすれば、その習慣はもっとも懇切な努力でさらにより意味のある本の選択や、いくらか系統だった読書への趣向の方向へ育てまもられてゆかなければならないだろう。読書にたいする日本の婦人の生育の過程はいまその一般の数の増大の第二の時期をへつつあるとも見られる。この土台の上に、婦人としての読書の質が高められなければならない。
 アメリカなどでは、がいして女の人の方がよけい本を読むということが周知の事実となっている。男は忙しく働き金をもうけている。女は時間と金とがあって、男より読書している。そのために、婦人が社会に働きかけてゆく力は非常に根づよい。そういわれている。けれども、こまかく考えてみれば、時間と金とが男よりも多いといわれているアメリカの読書する婦人たちのうちの
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