婦人の読書
宮本百合子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四〇年十月〕
−−

 あらゆる面で婦人の読者がふえてきているのが、この頃の日本のありさまだと思う。二三年来、その率は急に高まっているだろう。出版のインフレーション景気ということがいわれ、書物の氾濫につれて、とくに文芸の範囲で婦人の読者の数はましていると思われる。そういう一般の傾向は今日誰の目にも明かに映っているのだが、それと同時に、その現象が文化の向上のためにも婦人の精神の真のゆたかさのためにも大いによろこばしいこととして、そのまま肯定されきれない何かのニュアンスをふくんでいるというところも、現代の性格であると思う。
 何かの統計でもあったらきっとさぞ面白いだろうと思うが、これまでの日本で、明治以来今日まで婦人の読者の数はどんな時期どんな時代に増大し、読者としてその質を変えて来ているのだろうか。
 だいたい明治三十二年、女学校令というものができてから後、女学校をでた程度の若い婦人たちを目標として『女学世界』などがでてから、ジャーナリズムの
次へ
全9ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング