面として、捉えられていた。名所図絵風に、そこで有名であった老舗のかんばんや風俗をなつかしむ対象ではなくて、それらの風景にも若い女の心の苦しさで挑む風物として作者に存在した。久保田万太郎ではないこの作者が、女および作家としてなみなみでない過程を経て到達した今日という日、稚く浄い「キャラメル工場から」が、又新しく出版されてゆく今日という時代の動きの中で、よもや、己れの純真な生のたたかいのたたかわれた場所場所を、名所図絵として描き終ろうとするのではないだろう。やがて、描こうとするテーマが、作者にとって、その女の心に、その人間としての心に余り重く、痛ましくあるから、そのために、かえって作者は、遠くから、ゆっくり、その部分へ近づいてゆこうとしているのかもしれない。けれども、作者も読者も、この寸刻をゆるさず前進する情勢のうちに生きていて、特にこの作者は、急速に、戦争中の自身の奴隷の言葉を、作品によって、自身と人々の精神のうちに訂正しなければならない責任がある。「女作者」のうちに云われているとおり、逆用された文学の善意をしっかりわが手にとり戻して、この作者の文学のうちに自分たちの善意と人間意欲の手が
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