られるか、という弟に対して思わず激しく云い争うが、遂に黙ってそこに転がり、いつか微かな寝息を立てている弟の顔を見下して、作者の胸に湧き立った感慨は、読者をうつ真実性をもっている。「終戦日誌」は小説に描かれるべきたくさんの、当時らしい典型的な光景と人事にみちた一冊のスケッチ帳の趣をもっている。
久しぶりで検閲をおそれず思うとおりにものが書ける。この激しい歓びは、作者の歓びと雀躍とが大きければ大きいほど、却って作者を舌たらずにし、感動に溺れさせる。「一人行く」の作品としての未熟さは、この作者が、「この世に生きて、苦しんでもがいた印をのこさずに死なれようか」と思いつめて、久しい間の病と闘い抑圧とたたかって来た今日、生けるしるしと作品に向った、その亢奮から結果している。
作中の主人公私の、病的な亢奮と、作者の気分の高揚とが縺れあって、主観的になりすぎた。しかし、警察から出て、もう帰れない自分の家を電車の上から眺めながらお花さんの家へ行ってからの描写は迫真力をもっている。
「こういう女」は、素材としては「一人行く」とつながりながら、事件としてはその前におこった作者の経験を中心とした作品である
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