る。思いめぐらせば、この作品のテーマは、自身の完全な展開とその解決を可能にする力を、まだ今日の歴史の中には十分もっていないのだ。今日の地平線には、風雲ただならない雲の動きが感じられる。その波瀾を、この作者はどのようにしのぎ、「くれない」のテーマはどのように展開されてゆくのであろうか。
丹羽文雄その他の数人の作家によって、所謂「系譜小説」と呼ばれる作品が送り出された。それらの作品の主人公が、常に女性であるという事実に、何人かの批評家の注意が向けられている。このことは、些細なようで実に興味ふかい着眼である。そして、系譜小説の作者たちは、それらの女性たちの過ぎ来しかたのあれこれを、その文学によって、ひたすら、しきうつし、なぞっているだけで、そこには一向社会的な視角に立ってのテーマの追究や展開が試みられていないことについても、言及された。
この社会で同じ一家の推移にしろ、波瀾にしろ、その激しさは一族中で最も受け身な女性の上に容赦ない反応をあらわすという現実が、系譜小説の出現によって暗示されている。現代作家の何人かは、一人の女の一生にうつし出された変転のまざまざとした形象に目をひかれて、その
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