た慣習のためである。けれども、深く現実に眼をくばって見れば、そのように、真剣にくみうつ女性との社会関係がなり立っていない安易さそのものこそ、もっと現代社会の本質のところで、もっとその命の根のそばで、あらゆる彼を息づまらせ、人間性を喪わせ、文学を壊滅させている野蛮な日本の権力の存続を許して来た近代人としての自覚のおくれなのではなかろうか。
 やはりこの「くれない」について、婦人の生活に対しては進歩した理解をもっている筈の或る男の作家が、女主人公が、或る朝、二階を掃除しろという広介の言葉にそのまま従わなかった場面をとりあげて、何故素直に箒をとりあげないのだと、不快の感情で批評していたことがあった。この評者は、女房としてお茶をつぐ、つがぬことにこだわる明子に疳を立てて、「自分をそれほど大切にすることが彼女の人間を、彼女の女性としての在りようを、どれだけ高めているか、それは大きな疑問だと思う」と云っている。
 こういう批評の中には、筆者たちが現代の日本の社会で中年を越した夫として暮している日常生活の習慣的な気分が思わず溢れて、文芸批評の埒をこえてしまうのは、私たち婦人にとって可笑しくも悲しく、
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