讚美を、あてどのない氾濫から導き出して、それをいくらかでも生きるに甲斐ある現実人生の営みの上に、うち立てさせようとする理性の批判や暗示をきらった。たしかにそのような批評は、彼女の身について益々醗酵しはじめていた生の饐《す》えた香り、美が腐敗にかわる最後の一線で放つ人を酔わす匂いをさますものであったから。そして、芸術家として、最も主観性のつよい、従って、己れにたのむこともつよい彼女はわが身のまわりに花環のような讚美というものをこのんだから。
当時の「人間復興」が、人間のよって生きる歴史や社会との複雑な関連を無視していたために、どんな悲劇的な形で人間性氾濫に陥ったかということは、岡本かの子の文学の、撩乱たる空虚を例として、痛切に感じられる。岡本かの子の急死には、哀憐をさそうものがある。彼女が、作品に、また感情波瀾に、いのちをあふらしつくした最後の数年間は、色彩と影ばかりであった。実は空虚な横溢に、かの子は実在と感じていた美をもって追いかけ、それを内容づけようとし、云わば虚無と人工との競争であった。しかし、人生のリアリティーには作為をゆるす限度があった。その努力が、どんなにいじらしくあろう
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