のうち林檎の照りをとみかう見つゝ」とうたい、やがて、そのリンゴの可愛さにひかれてリンゴを持ったまま朝湯につかっている女としての我が心のはずみを、我からめで興じ、いとしみ眺める域に歩み入っている。この時代に辛苦であった経済事情も、ある安定を得たらしく見られる。
「おのづからなる生命《いのち》のいろに花さけりわが咲く色をわれは知らぬに」
「花のごとく土にし咲きてわれは見むわが知らぬわれのいのちの色を」
 昭和四年外遊の前に出た『わが最終歌集』では、
「舞ひ舞ひて舞ひ極まればわがこゝろ澄み透りつゝいよよ果なし」
と、成熟感が自覚されている。
 昭和十一年に晩年の芥川龍之介が登場する「鶴は病みき」が『文学界』に発表され、岡本かの子の作家としての出発が開始された。続いて「母子叙情」「金魚撩乱」「老妓抄」「雛妓」「丸の内草話」「河明り」その他昭和十四年の二月に急逝するまで、彼女の作品は横溢的に生み出された。
「をみな子と生れしわれがわが夫に粧はずしてもの書きふける」
とよむ状態のうちに送り出された。
 この作家の世界の特色は、作品の量の多産とともに、溢れる自己陶酔、濃厚な色彩の氾濫、「逞しい生きの
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