もあるだろう。多摩の旧家の愛娘で、小作人たちなどとは、言葉など交したりしないものとして育った一人の特殊な天稟のかの子と、「町の画家で生活を派手にするばかりに」十二のときから絵を習わされ、「あの円い膝にすがりつき心の底から泣くそのことによって過去世より生みつけられたこの執摯捨鉢な道化者の心がさっぱり洗いきよめられる」ことを願って結婚した良人との生活で、この作家の経た心の風波は激しかった『かろきねたみ』に詠まれているように、
「いとしさと憎さとなかば相よりしをかしき恋にうむ時もなし」
 いとしさと憎さの半ばする漫画家岡本一平との結婚生活の七年に、「愛のなやみ」の身を捩るばかりの感情世界をも経た。
「なやましき恋とはなりぬうらめしさねたましさなどいつか交りて」
「我が許へまことふたゝびかへり来し君かやすこし面変《おもがは》りせる」
 更に七年を経て大正十四年にまとめられた『浴身』では、「かの子よ、汝が枇杷の実のごと明るき瞳このごろやせて何かなげける」と、自身を歎じた悩みの時代はすぎたように見える。何か内的な展開がもたらされた。そして、このころからこの女歌人は、
「春寒にしてあしたあかるき部屋
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