「作品に対する意欲の烈しさを求める」という風な表現に転じた。一人の作家が人間として生きるどのような真実、実感、リアリティーを作品の世界に再現しているかという点は重要視されず、作家がどんな意欲の逞しさの自意識[#「意欲の逞しさの自意識」に傍点]で題材に面しているかという点がとりあげられ、それは作品の生活的真実即ち文学的現実と切りはなして云われた。この創作心理の断層から、題材主義の文学が簇出し、生産文学というものにもなって行ったのであるが、この文壇的雰囲気が川上喜久子という一人の婦人作家の創作態度に反映した。そして「滅亡の門」その他が発表されはじめた。
「滅亡の門」が発表されたとき、室生犀星は評をして、作者の一生懸命な力みはわかるが、女が男の真似をするにも及ぶまい、女は女のことを書いて欲しいという意味のことを云った。男性の作家が、婦人作家に対するゆとりで、女は女のことをと、一段下につきはなしてみれば、川上喜久子という作者と作品との血肉関係の不自然さをとらえ得る室生犀星その人も、自分の作品に向うとその制作態度が、やはり時代的な意欲の逞しさ[#「意欲の逞しさ」に傍点]に作用されて、偽悪の世界に
前へ
次へ
全369ページ中281ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング