、人間主義の思潮にとってルネッサンス以来歴史的な本質であった批判の精神をすてていたことは、どんな声も無駄にする欠陥であった。自己愛護から批判精神を肯定克服出来なかったことは、日本の現代文学が、その後ひきつづいて陥った悲惨な過程の重大な動因をなしている。治安維持法は外から、文学の内部からはその法律の兇猛さにおされながら、しかも自分たち文学者が理性を喪失するのは、自分たちの責任ではなくて、これまで、社会性階級性を文学に強要したプロレタリア文学に対する正当な「人間復興」の一部分だという風な考えかたは、果もなく現代文学を崩壊させた。
 過去の日本文学のジャンルで、「随筆」と云われたものは、評論に期待される批判精神の骨格を求めず、小説に必要とされる構成も求められなかった。構成の本質は現実把握である。随筆流行が、決して、その時代の真剣な文芸思潮の高揚を語らないのは、世界の文学史をみてもわかる。気分や雰囲気を中心としてかかれる随筆的傾向に応じて出現した婦人作家が、社会的感覚において旧套に服しているのもさけがたいことであったかもしれない。間もなくこの「人間復興」の声が戦争進行の怒濤の下に巻き去られ、「
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