うことは、階級社会のすべての社会悪の否定である。決して決して唯「貧乏がなくなる」というだけのことではない。社会生活の発展の現実は、各個人の感情そのもののうちにある過去の分裂を、統一に向わせるものではないのだろうか。物質的条件に立って実現する精神と性格の新しい展開こそ、人間の歴史のよろこびであるのではないだろうか。作中の一人物として、社会歴史の現実的展望を根本から誤って見ている関を典型として、その誤りに立脚してくりひろげられる関の思索に対立して「人間がめいめいの意欲をどう清算してゆけるか、その疑いで立ち往生した」真知子が全面的に正当とされている。読者の心にはつよい問いが湧いて来る。そういう関を分析し得ない作者として自然真知子のその疑問が導きのこされたのであろうか。それとも、真知子のその発言が表現されたくて、作者は関の非条理を許して来ているのであろうか、と。
 関と結婚するつもりで家を出た真知子には、その関を否定した今、此からの自分がどこへ行くべきか分らない。わかっていることは唯関について行けないということだけである。真知子は、地方の町へ赴任している姉の婚家へ行ってそこに滞在した。かつて彼
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