人的な、特殊な限られた場合に於ける私事にしかそれは過ぎない。その日の民衆のかち得ているものや幸福、それを実現させているものに関係ない筈です。例えばこの社会で、どの家の誰かゞ歯痛に悩んでいることが、一般の飢や失業と関係はないのと同じで。――もしそれを何か関係があるように考えたり、一小部分の現象で全部の構成まで否定しようとしたりするのは、過去の個人主義的迷妄ですよ。」
 歴史の現実の歩みは、関の説明とは全く反対のものである。人々のかち得るもの、幸福と呼ばれるものの実体のうちに金銭問題以外に男女の生活の面で、過去の気まぐれで無責任であった関係を、より社会的な感情、社会的な責任ある連帯、社会的な施設に高め実現してゆくそのことがふくまれていなくて、何の幸福があり得よう。感情にはっきりしたよりどころもない性的交渉で、私的[#「私的」に傍点]に生れようとする子供を抱えて、一人の進歩を希う若い女性が個人[#「個人」に傍点]的に苦しむという状態が、そのままで「一小部分の現象」として、合理的の社会の全部に無関係にはめこまれて在るというような逆立ちした見とおしは、そのものとして全く奇怪である。階級の根絶とい
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