ない。大庭との恋愛のいきさつについても作者は関を追求し得なかった。作者の観察と勉強によって作中につかまえられて来た関は、遂に作者の手に負えずそれはそれ、としたまま、真知子が「全女性のものであった憎みで」次のように叫んだことに作者としての感動を合わせている。「女がひとりで母親になれるとお思いになるんですか。あんたは望みもしなかったことを米子さんだけ望んだと仰云るんですか」と。ここで、テーマはいつの間にか、嘗て『青鞜』がそこを脱出し得なかった社会の段階へ、捩り戻されているのである。
 人間のみんなから貧乏をなくするように、こういう女の苦しみもなくなるのでなかったら、何になるだろう。斯んな思いで苦しむ人が一人でもいる間は、どんな見事なくみ立てで未来の社会が出来上ろうとも、真知子には、決してそれが完全な社会ではないと思えるのである。
 真知子の、この半分ものがわかり、半分はまるでものの分っていない疑いに答える関の言葉には、極めて真面目に歴史の中にとりあげ、見直されなければならない重大な錯誤がふくまれている。「人間に病気があるように、貧乏のない社会が来てもその種類の苦痛は多分残るでしょう。併し個
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