女から求婚を拒絶された河井が偶然その地方へ考古学上の発掘に来て再会する。彼は時代の激しい潮流に対しても、生ずべきものが生じつつある、と観る人間である。「どんな社会でも、自分たちの過去ははっきりさせる願望を捨てないでしょうから」と専門の学問への確信をもちつつ「正直なところは、当分何事も起らないで、やりかけのものを落付いて続けて行ければそれが私には仕合せなのです」というのが河井の生活の感情である。
 三月前とは心持の違って来ている真知子は、そこに「人間としての真実を見た」。やがて河井の資本系統の会社にストライキがおこり、それを知った真知子は、急に東京へかえる気になった。その汽車の中で河井が会社を職工の共同経営にまかし、研究所だけをのこして不動産の殆ど全部をなげ出すことにしたことを知らされる。真知子の周囲のものたちは、殆ど破産した河井と結婚しなかった彼女を「運の強い方よ」とよろこぶのであるが、「この時ほど河井に対する彼女自身の隠されていた愛を、はっきり感じたことはなかった」というのが、真知子の心の結果である。
 米子は、自分たちの生活にある矛盾も不自然も遠いいつかは矛盾でなくなり、不自然でな
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