「鉄の話」、黒島伝治の特色ある反戦的短篇があらわれたのもこの時代である。
殆どすべてが二十代の精鋭な新進によって押しすすめられていたプロレタリア文学運動の動きは、どんなにそれの未熟さを悪罵しようとも、旧い文壇にとっての脅威であることはかくせない事実であった。大震災からのち、沈滞した既成文壇では、自己批判がおこって、文壇の沈滞を打破せよという声となった。しかし、これらの人々は文学の旧さ、生活と文学とに対する陳腐なくりかえしを、何の力で、どういう風に打破すればよかったのだろう。佐藤春夫は、作家の経済的基礎の改善を云った。それに対して中村武羅夫は、作家の日常生活が余り常識になずんで、人生に対する冒険心を失ってしまっている点をあげて論じた。だがその中村武羅夫は、民衆の芸術時代から、最も頑固な芸術至上主義者であり、小市民的常識に反抗する文学に反抗しつづけて来ている人ではないだろうか。旧い文学からの脱皮は、話題となりつつ、各作家にとって真実の精魂を奮い立たせる熱情とならず、却って、久米正雄その他の有名作家の一団が麻雀賭博の廉で召喚されるという有様であった。
「貧しき人々の群」でロマンティックな人
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