作品は当時の日本の無産階級文学運動の進展に深く影響した。
さきにのべたように、宮嶋資夫の労働文学論にしろ、前田河広一郎その他の人々の作品にしろ、自然発生的な圧迫されているものの痛苦と反抗を訴えたもので、シンクレアの作品のように客観的に、資本主義社会の機構の代表的な部分におこっている事件を各専門面から調査して、それを作品化すというような着眼はされていなかった。労働するものの文学であるから、自然工場が描かれ、労働の姿が描かれるという関係にとどまっていた。ところが、一九二五年十二月(大正十四年)日本プロレタリア文芸連盟が創立される前後から生産機構に関連した「調べた芸術」の提案がされた。同時に、従来の作品批評が、批評するものの主観的な印象にだけ根拠をおく内在的な批評であったのに対して、作品批評は批評するものの主観をそのよりどころとするべきではなくて、批評するものの主観の外にある社会と文学との歴史的な現実関係の客観的真実を基準としてもつべきであると云われはじめた。そしてこの「調べた芸術」と「外在批評」を提案して、プロレタリア文学が、より客観的に社会真実にふれ得る創作態度と批評の一歩をふみつけた
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