の集団に属し、後にプロレタリア文学の領域に移った作家片岡鉄兵は当時の有様を、率直に次のように云っている。「当時の文壇の実状として、私たちは、どんなに苦しくても既成文壇に順応して行っては、その亜流として埋れる他はないのだから降参するわけには行かなかったのである」けれども、この新感覚派の運動は「敗北した。世界観の確立において自信ある根拠を持たなかったからである」と。
新感覚派を生み出した、進歩性のかけた中流気質のインテリゲンツィアと並んで、更に浮動的であった層が「知識の遊戯」としての探偵小説を勃興させ、大衆文芸を興隆させて行ったことも、当時の日本の社会と文化・文芸にあらわれはじめた歴史的な分裂を語って注目をひくところである。そして「知識の遊戯」である探偵小説の作家として、日本にはイギリスのように婦人作家が現れなかった事実も注目される。
この時代になって、日本にはアメリカ、ソヴェト・ロシアなどの新しい文学作品の翻訳が盛に出版されるようになった。アプトン・シンクレアの「ジャングル」「ボストン」、エルンスト・トルラーの戯曲、リベディンスキーの「一週間」、ロープシンの作品など。特にシンクレアの
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