ら、何人かの新しい婦人作家を送り出して来たことである。
「脂粉の顔」という短篇小説が時事新報の懸賞に当選して、藤村千代(宇野)という作家の名が人々に記憶されはじめたのは、大正十年のことであった。
 貧しく若い一人の女給が、ひいき客から競馬に誘われ、自身としてはきおい立ち勢一杯の期待で出かけた。ところが、その客は一人の美しい自信ありげな女性を連れていて、女主人公は自分にだけ分っている自分の気持で切なく苦しむという短い作品であった。が、婦人によって書かれた作品の世界に初めてくりひろげられた女給生活の断片や、色彩の濃い筆致が注目をひいた。つづいて「墓を発く」という重く苦しい家庭関係を描いた自然主義的ではあるがリアリスティックで本気な作品が発表された。やがて離婚して宇野千代となり、二年三年と経るにつれて、リアリスティックな傾向と混りあって、この婦人作家の他の一方の特色としてはじめから現れていた抒情的デカダンスとでも云うような傾向が、作品の基調をなすように変化して行った。生活に対する虚無風な態度とそれをあやどる女心というようなものが、作品世界の調子として自覚的に扱われ、この婦人作家が情痴と貧困と
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