、アナルコ・サンディカリズムの傾きがつよく支配していた当時の労働階級自身の政治能力、文化能力はまだ自身の階級の文化についてそれを自発的に提起するほどには発達していなかったのであった。これらの条件が組合わされて、当時の無産階級文学の運動は、自分たちの階級の中から文学創造力を引き出して来るような落着いた啓蒙・組織の活動よりも、寧ろ既成文壇に対する攻勢、既成の文学観念――「芸術の特殊性」「芸術の永遠性」への攻撃に重点がおかれる結果になった。当時はまだ、具体的な一つ一つの作品に即して新しい社会的文学的基準による批評、芸術における内容と形式との問題、芸術性の問題などを正当にとりあげる力をもっていなかったのであった。
 それらの事情のために、当時のプロレタリア文芸運動は、雑誌その他の上では相当目立っていたが、一般大衆の生活とはごくかけはなれたものとなってしまっていた。その時分は実際運動という風に云われた組合の活動にしたがっていたサンディカリスト平沢計七が、プロレタリア芸術運動なんと云っても、実際には知識階級の一部のもので、大衆の実際には何の役にも立っていない、という非難を加えた。そういう批判の半面
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