、オルゼシュコ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ァは自然主義の現実理解と手法とが許す最大限の力と熱とで、幸福な富裕な女性として生い立ち結婚し母となったマルタが、どうして最後にはひとの紙入れから札を盗んで逃げるところを馬車の轍にしかれて落命しなければならなかったかという、女として社会に生きる惨苦を描破している。オルゼシュコ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ァは、社会のありのままをあるがままに観察した結果として、女が母として自身の愛を完うするためにさえどれ程社会的には無力におかれているか、愛の成就のためには「今一つの成分を其に加える必要がある」という、婦人の経済的自立の必要の課題に到達して、この傑出した「マルタ」を描き出したのであった。
 日本に流れ入った自然主義の思潮は、辛うじて藤村の「破戒」や長塚節の「土」を記念としてもったのであったが、婦人作家の中からは、同じような意味で社会的な道標となるような作品は一つももたらし得なかった。花袋の「蒲団」が、自己に対して挑まれた戦いとして、私小説の濫觴とみられているが、その流れに沿うて見れば水野仙子の小説は、今日に到る迄日本の婦人作家の大多
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